局所麻酔の痛みを減らす工夫|水上形成外科 美容クリニック|浜松市の形成外科、美容外科、美容皮膚科、皮膚科

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医療コラム

局所麻酔の痛みを減らす工夫|水上形成外科 美容クリニック|浜松市の形成外科、美容外科、美容皮膚科、皮膚科

二重埋没法、眼瞼下垂、クマ取り、ほくろ取り等、美容外科や形成外科では局所麻酔を使って手術を行うことがほとんどです。(笑気麻酔や静脈麻酔を併用することもあります。)

局所麻酔は麻酔薬を注射して行うため、どうしても痛みが生じてしまいます。

どんなに痛みに強い人でも、注射が好きだという人はいないのではないでしょうか?

今回はできるだけ痛みの少ない局所麻酔を行う工夫について紹介します。

 

主に使用する局所麻酔は『キシロカイン』

主に使用している局所麻酔は『キシロカイン』です。
キシロカインは商品名で、リドカインが一般名です。

基本的にこのキシロカインにエピネフリンを混ぜた製剤である『E入りキシロカイン』を使用します。

エピネフリンには血管を収縮させる作用があるため、キシロカインに混ぜて注射すると、

・血管が収縮するので出血が減る

・局所麻酔の効果が長く続く

といった効果があります。

 

局所麻酔の痛みの種類

局所麻酔の痛みは、主に3つに分けられます。

・針を皮膚に刺す時の痛み

・針を皮膚の下で進める時の痛み

・麻酔薬を注入する時の痛み

これらに痛みを和らげるために当院で行っている工夫を紹介していきます。

 

① 注射をする前に表面麻酔を行う(必要時)

注射をする約30分前に、表面麻酔を行います。

表面麻酔にはクリーム剤、貼付剤があり、手術をする部位等によって使い分けます。

表面麻酔を行うことで、針を刺す痛みを和らげることができます。

皮膚の深いところには効かないので、麻酔薬を注入する時の痛みには効果は低いです。

 

② 細い注射針を使う

外径0.30〜0.40mmの非常に細い針を使用しています。

想像に難くないかもしれませんが、細い針は太い針と比べて痛みが少ないです。

細い針を使用すると、針を刺す時の痛み、針をすすめる時の痛み、麻酔薬を注入する時の痛み全てを減らすことができます。

針が細いと麻酔液が入るスピードが遅くなるので、注入する時の痛みも少なくなるのです。

通常の採血や予防接種の注射の時は外径0.65~0.70mmの針を使用することが多いですが、当院の局所麻酔ではそれより半分くらい細い針を使用しています。

③ 皮膚を摘んだり、振動させたりする

テーブルの角に足をぶつけたり、扉で指を挟んだりした時、その部分をさすって痛みが和らいだことはありませんか?

これは、ゲートコントロール理論と言うメカニズムが関係しています。

神経の刺激が脳に伝達される際に、細い神経よりも、太い神経の伝導の方が早く脳に強く伝わり、細い神経の伝導が抑制される性質があります。

これをゲートコントロール理論と言います。

痛みを感じる神経は細く、触ったり圧迫したりを感じる神経は太いため、さすると太い神経の伝導が脳に伝わり、痛みを感じる細い神経の伝導が抑制されて痛みが和らぐのです。

このゲートコントロール理論に基づいて、針を刺すときに、皮膚を摘んだり、振動させたりするとことで、針を刺す痛みを和らげることができます。

患部を冷やすことも痛みを減らす効果があります。

また、音楽をかけたり、動画を見たりして注意をそらすことでも痛みを和らげることができます。

 

④ 最初の注射は針を皮膚に垂直に刺す

最初の注射時に、針を皮膚に垂直に刺します。

針を斜めに刺すと痛みを感じる痛覚神経を多く貫通することになり、垂直に刺した場合と比べてそれだけ痛みを強く感じてしまいます。

針を垂直に刺すと痛覚神経を貫通する量を減らすことができ、痛みを減らすことができます。

 

⑤ 注射液はゆっくり注入し、針はゆっくり進める

注射器を強い圧力で押して勢いよく大量の注射液を注入しようとすると痛みが強く出るためできるだけゆっくり注入します。

また、針先を進めるときも、ゆっくり、麻酔がすでに効いているところまでしか進めないようにすることで痛みを減らすことができます。

 

⑥ 針を刺し直す時は、すでに麻酔が効いているところから刺し直す

細い針は針の長さが短いので、一度の注射で麻酔を効かすことができる範囲には限度があります。

広い範囲に麻酔を効かせたい場合、何箇所か針を刺し直す必要があります。

その際にすでに麻酔が効いているところから針を刺すと、2回目以降に針を刺す時の痛みを和らげることができます。

血管を収縮させる麻酔薬『E入りキシロカイン』を使用すると、麻酔が効いている範囲の皮膚が白くなるのでその範囲を目安に追加の注射をします。

 

⑦ 十分な量の麻酔を行い、しばらく待ってから手術を開始する

様々な注入技術を駆使しても、麻酔の量が不足していると痛みが残ってしまうため、必要十分な量を注射しないといけません。

また、麻酔がしっかり効くまでには時間がかかるので、しばらく待ってから手術を始めます。

エピネフリン入りの麻酔薬では、しばらく待つとエピネフリンがしっかり効いて出血が少なくなって手術自体も進めやすくなります。

急がば回れですね。

 

 

まとめ

痛みの少ない局所麻酔を行う工夫について紹介しました。
他にも細かな工夫は色々ありますが代表的なものを紹介しています。

これでも痛みが強い方や、不安が強い方では、笑気麻酔や静脈麻酔を併用します。

痛みをゼロにする方法は今のところ知りませんが、常に新しい技術を習得してできるだけ痛みを少なくする心がけは大事だと思っています。

①あらかじめ表面麻酔を行う。
② 細い注射針を使う。
③皮膚を摘んだり、振動させたりする。
④ 最初の注射は針を皮膚に垂直に刺す。
⑤ 注射液はゆっくり注入し、針はゆっくり進める。
⑥ 針を刺し直す時は、すでに麻酔が効いているところから刺し直す。
⑦ 十分な量の麻酔を行い、十分待ってから手術を開始する。

参考文献

1. Joukhadar N, et al.  How to Minimize the Pain of Local Anesthetic Injection for Wide Awake Surgery. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2021; 9: e3730.

2. Strazar AR, Leynes PG, Lalonde DH. Minimizing the paiN of local anesthesia injection. Plast Reconstr Surg. 2013; 132: 675–684.

3. McKee DE, et al. Optimal time delay between epinephrine injection and incision to minimize bleeding. Plast Reconstr Surg. 2013; 131: 811-814.